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EA評価では、総損益や勝率、プロフィットファクター(PF)、最大ドローダウン、取引回数といった数字が判断材料になります。ただし、数字を並べて比較しただけでは、その成績がどのような条件で作られたのか、損失がどう積み上がってきたのかまでは見えてきません。
「EAは「成績」だけで選ぶと失敗する理由」では、目立つ数字だけではEAを判断しにくい理由を扱いました。本記事はその続編にあたります。前回が「なぜ数字だけでは足りないのか」を扱ったのに対し、今回は「では、どの順番で何を見るのか」を5つの確認軸として整理しました。
目次
- EA評価は一つの点数を決める作業ではない
- 軸1 成績が作られた検証条件を確認する
- 軸2 検証期間と取引回数をセットで見る
- 軸3 利益だけでなく損失の出方を確認する
- 軸4 バックテストと実運用の関係を確認する
- 軸5 自分の口座全体への影響を確認する
- EA評価のチェックリスト
- まとめ
EA評価は一つの点数を決める作業ではない
EAの評価は、PFや勝率のような単一の指標で優劣を決める作業ではありません。
たとえば同じPF1.5でも、取引回数が30回のEAと3,000回のEAとでは、その数字から読み取れる情報の確からしさが違います。検証期間、ロット設定、損失の出方が変われば、同じ数字でも意味合いは変わってきます。バックテストで確認された成績が、フォワードテストやリアル口座でも同じように推移するとは限りません。
そこで本記事では、①検証条件 → ②検証期間と取引回数 → ③損失の出方 → ④実運用との関係 → ⑤自分の口座への影響、という順序で情報を追っていきます。前の軸で確認した内容が次の軸の前提になるため、順番どおりに見ていくのが分かりやすいはずです。
軸1 成績が作られた検証条件を確認する
成績の数字に目を通す前に、その成績がどういう条件で作られたものかを押さえておきたいところです。主な確認項目は次のとおりです。
- 対象期間
- 通貨ペア
- 時間足(売買判断の基準となる時間の単位)
- 初期資金
- ロット設定(1回あたりの取引量)
- スプレッド(売値と買値の差)
- スリッページ(注文時の価格と実際に約定した価格のずれ)
- 手数料などの取引コスト
条件がそろっていない成績を数字だけで並べると、その差がEAの売買ロジックによるものなのか、単に検証条件の違いによるものなのかが判別できなくなります。たとえば検証時に想定したスプレッドが実際の取引環境より狭ければ、その分だけ成績は良く出ます。取引回数が多いEAほど、この差はコストとして積み上がっていきます。
ロット設定も見落としやすいポイントです。取引ごとに同じ数量を使う固定ロットと、口座残高に応じて取引量が変わる設定とでは、損益曲線の形そのものが変わります。取引量が増減する設定の場合、右肩上がりに見える曲線が、EAの売買精度ではなく取引量の拡大を映しているだけ、ということもあり得ます。
用語の意味を確認したい場合は用語集にまとめています。バックテストそのものの読み方については「「バックテストだけ」のEAで失敗しないために知っておきたいこと」もあわせてご覧ください。
軸2 検証期間と取引回数をセットで見る
検証期間の長さだけを見ても、判断材料としては足りません。長期間のデータがあっても取引回数が数十回であれば、確認できる事例はその数十回にとどまります。逆に取引回数が多くても、特定の相場環境に偏った短い期間の成績であれば、別の局面での挙動までは読み取れません。
検証期間や取引回数には目安が示されることもありますが、その数字を満たしていれば十分、という性質のものではありません。EAの取引頻度を踏まえたうえで、上昇・下落・レンジといった複数の相場環境が期間に含まれているか、特定の時期だけが全体の成績を押し上げていないかを見ておきます。
もう一つ、EAのバージョンや設定が途中で変更されている場合の扱いにも注意が必要です。公開されている成績のうち、どの期間が現在の仕様に対応しているのか。長期のデータがあっても、その途中で売買ロジックや設定条件が変わっていれば、全期間を同じ条件の成績として扱うことはできません。
軸3 利益だけでなく損失の出方を確認する
総損益や勝率からは、損失がどのように発生してきたのかが読み取れません。
勝率が高くても、1回あたりの損失が大きければ、少ない負けで利益が消えることがあります。反対に勝率が低くても、利益となった取引の合計額が損失となった取引の合計額を上回れば、一定期間の総損益はプラスになります。勝率は「勝った回数の割合」であって、「勝った金額の大きさ」を示すものではない、という点は押さえておきたいところです。
PFが示すもの、示さないもの
PFは、一定期間の総利益を総損失で割った指標で、その期間トータルで利益と損失がどういう関係にあったかを表します。ただし、運用の途中で資産がどこまで落ち込んだか、1回ごとの損失がどの程度だったかまでは、この数字だけでは分かりません。同じPFでも、損失が小刻みに出たケースと、一度に大きく出たケースが同居し得ます。
PFの読み方は「プロフィットファクター(PF)とは?1.2と2.0、数字の意味の違い」で扱っています。なお、個別記事で紹介している目安の数値は、一定の前提を置いたうえでの参考値です。すべてのEAに当てはまる合格ラインではない点にご留意ください。
損失の出方を見るときの確認項目
- 平均損失
- 最大損失
- 連続して損失となった回数
- 最大ドローダウン
- 含み損の推移
- 取引ごとの損益のばらつき
最大ドローダウンは、運用中の資産や損益が過去のピークからどれだけ落ち込んだかを示します。過去の記録である以上、将来の損失がその範囲に収まる保証はありません。詳しくは「最大ドローダウンとは?「落ち込み幅」を生活感覚で理解する」をご覧ください。
含み損の推移や損益のばらつきは、そもそも公開されていないケースも珍しくありません。その場合は無理に推測せず、確認できた範囲と確認できなかった範囲を分けて記録しておくと、後で他のEAと比較するときに役立ちます。
軸4 バックテストと実運用の関係を確認する
バックテストは、過去の相場データを使って一定の条件でEAを動かした結果です。フォワードテストは、EAが完成したあとに発生した相場データで稼働状況を追ったもので、リアル口座の実績になると、実際の価格配信や約定環境がそのまま反映されます。3つは性質の異なるデータですので、まとめて「実績」と括らず、分けて見ていきます。
フォワードテストについては「フォワードテストとは?EA選びで確認したい実運用データ」で解説しています。
バックテストと実運用では、スプレッド、スリッページ、価格データ、取引コスト、約定環境といった前提が異なります。両者の結果が一致することを前提には置けません。差があった場合も、それだけでEAの良否を判断するのではなく、どの条件が違っているのかを一つずつ切り分けていきます。乖離が生じる仕組みは「EAのバックテストとリアル成績が乖離する理由|約定品質を解説」で詳しく扱っています。
あわせて、公開されている実運用成績が、いま提供されているEAと同じバージョン・同じ設定によるものかどうかも確認しておきます。第三者検証サービスを使ってリアル口座の実績を見る方法は「myfxbookとは?「数字を盛れない」第三者検証の仕組み」にまとめています。
軸5 自分の口座全体への影響を確認する
公開されている成績が良好に見えたとしても、その成績が前提としている運用条件と、自分の運用条件が同じとは限りません。
固定ロットで、通貨ペアや値幅、取引回数などの条件がそろっているなら、ロット数を大きくするほど利益額も損失額もおおむね比例して大きくなります。成績表に並ぶ損益額は、あくまでその検証で使ったロット数での結果です。
複数のポジションを同時に持つEAや、1つの口座で複数のEAを動かす場合は、見る対象が変わります。個別のロット数ではなく、同時に保有し得るポジション数と口座全体の取引量が判断材料になります。
見落としやすいのが、必要証拠金と損失規模の混同です。この2つは別の問題です。必要証拠金は取引を建てるために必要な金額であって、実際に生じる損失額の上限を示すものではありません。
ロット数の考え方は「EAのロット数とは?資金とリスクの関係をやさしく解説」、口座全体のリスクについては「EAのリスク管理とは?損失に備えるための基本的な考え方」で扱っています。
EA評価のチェックリスト
ここまでの内容を、確認の順序どおりに並べたものが次のリストです。
- 成績がどのような検証条件で作られたか
- 検証期間と取引回数の両方を確認したか
- 複数の相場環境が検証期間に含まれているか
- 利益だけでなく、損失の大きさや連敗、最大ドローダウンを確認したか
- バックテスト、フォワードテスト、リアル口座の実績を分けて確認したか
- 実績の期間と、現在のEAのバージョンや設定が対応しているか
- 自分のロット数や複数EAの運用を含め、口座全体への影響を確認したか
すべての項目について同じ情報が公開されているとは限りません。確認できる情報と確認できない情報を分けたうえで、限られたデータから将来の成績を断定しない。この線引きが、EA評価では欠かせません。
まとめ
EA評価では、総損益、勝率、PF、最大ドローダウンといった目立つ数字だけでなく、その数字がどの条件で作られ、どんな損失を伴ってきたのかまで見ていきます。さらに、バックテストと実運用の違い、EAのバージョンや設定、ロット数、複数EAを運用した場合の口座全体への影響と、確認すべき軸は一つではありません。
PF、勝率、最大ドローダウン、検証年数、取引回数のいずれについても、すべてのEAに共通する一律の合格基準を設けることはできません。各指標を単独で判断材料にせず、同じ条件で比較できる情報を組み合わせて確認する。それが5つの軸に整理した意図です。
どのEAを選び、どのような条件で運用するかは、公開されている実績、EAの仕様、運用資金、取引条件などを確認したうえで、利用者ご自身が判断することになります。
→ 関連用語をさらに詳しく知りたい方はこちら:用語集(https://www.forex-exchange.co.jp/support/vocabulary)
→ よくあるご質問はこちら:FAQ(https://www.forex-exchange.co.jp/support/faq/)
→ FEAT 3.0の詳しいサービス内容はこちら:FEAT 3.0の特徴(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/)
監修:株式会社トリロジー
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269
本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAを利用したFX取引では、元本を割り込む損失が生じる場合があります。お取引にあたっては、契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。