EAのバックテストとリアル成績が乖離する理由|約定品質を解説
著者:FOREX EXCHANGE株式会社 監修:株式会社トリロジー

EAのバックテストとリアル成績が乖離する理由。約定品質を解説。

たとえば、平均利益5pips、勝率85%というバックテスト結果を示し、美しい右肩上がりを描いていたEAが、リアル口座で動かした途端に成績を落とすことがあります。

このような経験を持つ方や、そういった話を聞いたことがある方は多いと思います。なぜこのような乖離が起きるのか。原因はひとつではありませんが、その中でも見落とされがちな要因のひとつが「約定品質」です。

この記事では、バックテスト成績とリアル成績が乖離する仕組みを、約定品質という観点から整理します。

バックテストが再現できないもの

バックテストとは、過去の相場データにEAを当てはめて成績を測るテストです。過去のデータと設定された取引条件を用いるバックテストでは、実際の取引環境を完全に再現することは困難です。

一般的なバックテストでは、過去の価格データとあらかじめ設定された取引条件を用いて約定を再現します。そのため、実際の取引で生じるスプレッドの変動、注文処理の遅延、スリッページ(注文時に想定した価格と実際の約定価格のズレ)、注文が成立しないケースなどを、完全には再現できないことがあります。

一方、実際のFX取引では、これらの条件が相場状況や取引環境によって変化します。このバックテスト上の条件と実際の取引環境との差が、バックテストとリアル口座の成績に乖離を生じさせる要因のひとつです。

約定品質とは何か

約定品質とは、注文を出したときに、どれだけ意図した通りの価格・タイミングで約定するかを示す概念です。約定品質に影響する主な要素は以下の3つです。

一つ目はスプレッドです。スプレッドとは、売値と買値の差(取引コスト)のことです。EAが取引するたびにこのコストが発生します。スプレッドが広いほど、1回の取引にかかるコストは大きくなります。

二つ目はスリッページです。スリッページとは、注文時に想定した価格と実際の約定価格との間に生じるズレのことです。相場が急激に動いているときや流動性が低い時間帯などに発生することがあり、想定より不利な価格で約定する場合もあれば、有利な価格で約定する場合もあります。

三つ目はリクオートです。リクオートとは、注文時に指定または表示されていた価格では約定できない場合に、別の価格が再提示されることです。採用されている注文執行方式によっては発生しない場合もありますが、短時間で売買を繰り返すスキャルピングEAでは、再提示によってエントリーのタイミングや価格が想定からズレる可能性があります。

スプレッドとスリッページは、小さな利益幅のEAに致命的になる

スプレッドとスリッページの影響は、EAの平均利益幅によって大きく変わります。

たとえば、ドル円を取引するEAについて、スプレッドやスリッページを考慮する前の平均利益が5pipsだったとします。1回の取引に相当するスプレッドコストが1.5pipsであれば、これを差し引いた利益は3.5pipsです。さらに決済時に1pipsの不利なスリッページが発生した場合、利益は2.5pipsとなります。この例では、当初想定した利益の半分に相当します。

これは、リアル環境で起こり得る事例のひとつです。特に、相場が急変しているときや流動性が低下している時間帯などでは、スプレッドの拡大やスリッページの影響が大きくなる場合があります。

バックテストの設定によっては、スプレッドの変動やスリッページが十分に反映されないことがあります。その場合、実際の取引コストがバックテスト結果に織り込まれず、リアル口座ではバックテストほどの利益が残らないことがあります。

平均利益が小さいEAほど、スプレッドとスリッページの影響を受けやすいという点は、EA選びで見落とされがちな視点のひとつです。

注文方式によって生じる違い

もうひとつ、約定品質に直結する要因として「注文方式」があります。

EAのエントリーに使用される注文方式には、成行注文と指値注文などがあります。成行注文は、注文時点で市場に提示されている価格での成立を目指す注文です。指値注文は、あらかじめ指定した価格またはそれより有利な価格での成立を目指す注文です。

成行注文を使うEAの場合、バックテスト上のエントリー価格と、実際の取引における約定価格との間にズレが生じる可能性があります。EAが売買条件を判定するタイミングやバックテストの方式は、EAの設計やテスト設定によって異なります。一方、実際の取引では、価格変動に加えて通信や注文処理に要する時間も影響するため、相場の動きが速い局面では約定価格の差が生じやすくなります。

成行注文が採用される理由のひとつとして、売買条件が成立した時点で注文を出すという、比較的シンプルな設計にしやすいことが挙げられます。指値注文のように指定価格への到達を待つのではなく、その時点での取引機会を捉えることを優先する設計ともいえます。ただし、注文を出した時点の表示価格で必ず約定することを意味するものではありません。

一方、指値注文では、あらかじめ指定した価格またはそれより有利な価格での約定を目指します。そのため、成行注文とは約定の性質が異なります。反面、相場が指定価格に届かなければ注文が成立せず、エントリーの機会を逃すことがあります。

また、VPSや通信に障害が発生した場合、EAによる新規発注、注文変更、取消し、決済管理などが、意図したタイミングで行われない可能性があります。なお、FX会社のサーバーに受け付けられた指値注文は、一般にVPS停止後も注文として残りますが、EAによるその後の管理が行われなくなる場合があります。

このように、成行注文には取引機会を捉えやすい一方で約定価格が想定からズレる可能性があり、指値注文には価格条件を指定できる一方で注文が成立しない可能性があります。どちらが一律に優れているというものではなく、EAの売買ロジックや運用目的によって適した方式は異なります。バックテストとリアル口座の成績が乖離している場合には、EAが採用している注文方式を確認することも、原因を切り分ける際の参考になります。

業者(ブローカー)によって約定品質は異なる

同じEAを使用しても、利用するFX会社や口座、相場状況などによって、約定結果に違いが生じることがあります。

スプレッドの水準や注文執行方式、取引システム、サーバーの処理状況などはFX会社によって異なります。また、流動性や価格変動、注文が集中する時間帯なども、スリッページや注文の成立状況に影響します。そのため、特定の要因だけで約定品質を評価することはできません。

バックテストを行う際には、実際に利用する口座のスプレッド水準や取引条件に近い設定を用いることが、バックテストとリアル口座の成績差を検証する際の参考になります。

検証時に確認しておきたいこと

バックテストとリアル口座の成績に生じ得る乖離を事前に把握するために、検証段階で確認したい視点を整理します。

バックテストを行う際は、実際の取引環境で想定される水準よりもスプレッドを広げた条件でも、成績が大きく崩れないかを確認することが参考になります。

その際、PFなどの指標も確認材料になりますが、適切な水準はEAの売買回数、平均利益幅、損益構造、検証期間などによって異なります。特定の数値だけで一律に評価せず、ほかの指標やリアル口座の実績と併せて確認することが重要です。

また、myfxbookで公開されているリアル口座のフォワード成績とバックテスト成績を比較することも、リアル環境におけるEAの傾向を確認する手段のひとつです。ただし、両者の差は約定品質だけでなく、相場環境、運用期間、設定値、資金管理などによっても生じます。

確認する際は、単純な損益カーブだけでなく、ドローダウンの推移、取引回数、運用期間、口座情報の認証状況、ブローカー名、取引条件に関する記載などにも目を通すと、その実績がどのような条件で得られたものかを把握しやすくなります。

まとめ

バックテストとリアル成績が乖離する原因は、ロジックだけに求めるべきではありません。スプレッド・スリッページ・リクオート・注文方式など、約定品質に関わる要素をバックテストで完全に再現することが難しいという、バックテストとリアル環境の構造的な違いがあります。

特に平均利益幅が小さいEAほど、これらのコストの影響を受けやすく、バックテストで見えていた優位性がリアル環境では消えてしまうケースがあります。

EAを選ぶ際には、バックテストの成績だけでなく、どのような取引環境を前提に設計されているか、リアル口座の実績が第三者による検証サービスなどで公開されているかを確認することも、判断材料のひとつになります。

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監修:株式会社トリロジー
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269

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本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な技術解説を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAを利用したFX取引では、元本を割り込む損失が生じる場合があります。FX取引にはリスクが伴います。お取引にあたっては契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。