EAの取引コストは成績にどう影響する?期待値と実運用をつなぐ見方
著者:FOREX EXCHANGE株式会社 監修:株式会社トリロジー

EA(自動売買)の成績表に表示される利益には、実際に負担する費用がすべて反映されているとは限りません。スプレッドやスリッページの影響は約定価格に含まれる一方、取引手数料や助言報酬などが別に計上される場合もあります。

重要なのは、費用を一律に差し引き直すことではなく、成績表の損益に何が含まれ、何が含まれていないのかを確認することです。その違いは、1取引あたりの平均損益にも表れます。

10月23日の基本記事では、過去の損益合計を取引回数で割って求める期待値の基本を解説しました。本記事では、その計算に使う損益額の範囲に注目し、取引コストを反映した成績の読み方を具体例とともに考えます。

同じ「利益」でも、費用を含む範囲は異なる

「利益」「損益」「純損益」などの項目が示す範囲は、サービスごとに異なります。売買損益のみの場合も、手数料やスワップポイントまで反映した場合もあります。

例えば、売買損益がプラス50,000円でも、別途報酬が発生するなら、費用反映後の平均損益は異なります。

一方、表示されている損益に必要な費用がすでに含まれているなら、もう一度同じ金額を差し引く必要はありません。

最初に確認したいのは、次の3点です。どの取引を集計したか、どの種類の損益を表示しているか、別途発生する費用があるか。取引回数や費用の計上方法が分からないまま、異なる成績表の数字を単純に比較しないことが大切です。

取引コストは損益のどこに反映される?

FX取引の成績に関わる要素には、スプレッド、スリッページ、手数料・助言報酬、スワップポイントなどがあります。ただし、これらはすべて同じ方法で差し引く「固定の手数料」ではありません。

約定価格に反映されるもの

スプレッドは買値(Ask)と売値(Bid)の差、スリッページは注文時の想定価格と実際の約定価格との差です。両者は異なりますが、実際の新規・決済価格を基に計算した損益には、通常それぞれの影響が織り込まれています。

例えば、買い建玉を買値で新規建てし、売値で決済した結果から算出した損益には、その取引で実際に成立した価格差が反映されています。そこからスプレッド相当額を機械的にもう一度差し引くと、二重計上になるおそれがあります。

スプレッドやスリッページの詳しい仕組み、注文方式による違いは、既存の「スリッページとは?EAの利益に影響する約定の仕組み」(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/ea-knowledge/what-is-slippage/)で解説しています。

別に記録されることがあるもの

取引手数料や投資助言に関する報酬は、売買損益とは別項目で計上されることがあります。費用が発生する単位も、取引数量、新規建玉、取引回数など、サービスの条件によって異なります。

スワップポイントは、建玉の保有に伴って発生する受払いです。常に支払いになるわけではなく、受取りになる場合もあります。したがって、ほかの費用と一緒に必ずマイナスとして扱うのは適切ではありません。

どの項目が反映済みかは、成績表の仕様や利用条件によって異なります。「損益」と書かれているだけで、すべての費用を含んだ金額だとは限りません。

費用を二重に差し引かないための確認方法

損益を読み直すときは、「費用を計算する」前に「すでに反映されている費用を特定する」という順序が重要です。

まず、表示された損益が実際の約定価格を基にしているか確認します。次に、手数料、報酬、スワップポイントなどの項目が売買損益に含まれているのか、別欄にあるのかを確認します。そのうえで、費用反映後の金額を求める必要がある場合に限り、未反映の項目を加減します。

例えば、ある期間の表示額が「スワップポイント・手数料を含む確定損益」であれば、同じ項目を再度加減しません。一方、「売買損益のみ」の集計であれば、別に生じた費用や受払いを確認する余地があります。

ただし、スプレッドやスリッページを反映していない仮定価格で損益を試算する場合は、それらの影響を別途考慮する必要があります。実際の約定価格から計算した損益を用いる場合とは、前提が異なります。

必要なのは「費用を多く差し引くこと」ではなく、「計算の出発点と費用の範囲を一致させること」です。この点が曖昧だと、EAの収益性を実態より低く、または高く見積もる可能性があります。

具体例:別途発生する報酬で平均損益はどう変わる?

ここでは、売買損益にまだ反映されていない費用を加味する、架空の計算例を考えます。以下の100取引は、100回の新規建玉と、それぞれに対応する100回の決済が完了していると仮定します。部分決済や複数建玉の合算はありません。

・決済が完了した取引:100回
・各新規建玉の数量:1万通貨
・約定価格を基にした売買損益合計:プラス50,000円
・売買損益には実際のスプレッド・約定価格の影響を反映済み
・別途発生し、上記損益には未反映の費用:新規建玉1万通貨につき25円
・この例では、スワップポイントやその他の費用は考慮しない

別途費用を考慮する前の1取引あたりの平均損益は、50,000円÷100回=プラス500円です。

費用の合計は、25円×100回=2,500円です。したがって、費用反映後の損益合計は、50,000円-2,500円=プラス47,500円となります。

これを100回で割ると、費用反映後の1取引あたりの平均損益はプラス475円です。

ここでの500円と475円の違いは、同じ100回の取引に対し、別途費用を算入する前か後かという集計範囲の差です。将来の平均損益が475円になるという予測ではありません。

また、最初の50,000円に同じ2,500円がすでに含まれていたなら、改めて差し引くのは誤りです。「費用を反映すると平均が下がる」という結果だけを覚えるのではなく、何が未反映だったから差し引いたのかに注目してください。

なお、これは計算の仕組みを示す架空例であり、実在のEAの運用成績や利益見込みを示すものではありません。

期待値の定義と勝率・平均利益・平均損失による計算方法は、「EAの期待値を読む|1回あたりの平均損益を見る基本」(【要確認:公開後URL】)をご覧ください。

取引回数だけでなく、取引数量と費用の発生単位を見る

先ほどの例では数量を1万通貨に揃えましたが、実際には取引ごとに異なる場合があります。

費用が新規建玉数量に比例するなら、同じ100回でも、1回1万通貨と2万通貨では費用総額が異なります。

反対に、取引回数が異なっていても、総取引数量が同じ場合があります。ただし、注文単位で端数処理がある費用では、取引の分け方によって合計額の扱いが変わることもあるため、公式の計算条件を確認する必要があります。

取引数量が異なれば損益額も変わり得ます。平均損益が大きいという理由だけで、EAの売買ロジックや費用効率が優れているとは判断できません。

必要に応じて同じ数量に換算した損益や費用総額も見ます。ただし、換算しても取引内容やリスクが同一になるわけではありません。

スプレッドフィルターは平均損益を改善する?

EAの中には、スプレッドが一定の水準を超えているとき、新規注文を見送る仕組みを備えたものがあります。これがスプレッドフィルターです。すべてのEAに搭載されている機能ではありません。

この仕組みを理解するときは、「取引時の条件」と「集計される取引の集合」を分けて考える必要があります。

フィルターによって、スプレッドが広い局面での新規注文を見送れたとしても、その取引が必ず損失になっていたとは限りません。見送った取引が利益になる場合もあります。したがって、フィルター導入によって平均スプレッドが小さくなっても、総利益や1取引あたりの平均損益が必ず改善するわけではありません。

例えば、フィルターなしで100回、フィルターありでは70回の取引が行われたとします。フィルターありの結果だけでは、実際には取引しなかった場面で利益が得られたか、損失が生じたかは分かりません。また、フィルターの有無によって、その後の取引機会が変化することもあります。

したがって、70回の平均損益だけが良くなっていても、それだけで「成績が改善した」とは判断できません。

両者を比較するなら、同じ対象期間・通貨ペア・取引数量の設定・費用の扱いを揃え、取引回数と費用反映後の損益合計、1取引あたりの平均損益を併せて確認します。

平均損益だけが上がっても、取引数や期間全体の損益が変わっているなら、その違いを含めて評価する必要があります。フィルターの最適な数値を、すべてのEAに共通する基準として示すこともできません。

なお、フィルターは注文の直前にスプレッドを確認する仕組みであっても、その後のスリッページや未約定を防ぐことまでは保証しません。実際の機能や判定方法はEAごとに異なります。

バックテストと実運用では、費用の前提を揃えられる?

バックテストの結果と実運用の結果を比較するときも、今回の焦点は「費用がどこまで損益に含まれているか」です。

バックテストの損益に手数料や報酬が含まれていないのに、実運用の損益には含まれている場合、両者を同じ条件の平均損益として比べることはできません。反対に、バックテストですでに考慮した費用を、比較のためにもう一度差し引くのも適切ではありません。

取引回数が異なる場合は、対象期間の損益合計だけを比べると、費用の影響と取引機会の差が混ざります。まず、損益の集計範囲、取引回数の数え方、費用の計上条件を確認します。そのうえで、比較できる範囲に限って考えることが重要です。

費用条件を揃えても、相場環境、価格データ、設定、約定状況の差は残り得ます。取引コストだけですべての乖離は説明できません。

約定品質やバックテストにおける再現条件については、既存の「EAのバックテストとリアル成績が乖離する理由|約定品質を解説」(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/ea-knowledge/backtest-vs-real-performance-gap/)で扱っています。本記事ではその説明を繰り返さず、費用を反映した損益の比較に限定します。

FEAT 3.0の助言報酬を費用項目の例として見る

具体的なサービス条件の例として、FOREX EXCHANGEが提供するFEAT 3.0の助言報酬を取り上げます。

FEAT 3.0では、取引時のスプレッドに加え、新規建玉1万通貨あたり25円(税込)の助言報酬が発生します。千通貨単位で取引する場合は、1千通貨あたり2.5円を基準に算出し、1円以下の端数は四捨五入して1円単位とする条件が案内されています。建玉の保有状況などにより、スワップポイントの受払いが生じる場合もあります。

先ほどの架空例の「1万通貨あたり25円」は、FEAT 3.0の助言報酬と同じ金額に設定したものです。ただし、100取引や50,000円の損益は架空であり、FEAT 3.0の運用実績ではありません。

また、成績表に助言報酬が含まれているかどうかは、個別の表示項目と集計条件を確認する必要があります。FEAT 3.0の成績を確認する際も、表示された損益と助言報酬の計上範囲を対応させて確認することが重要です。

具体的な費用、端数処理、最新の適用条件は「FEAT 3.0取引概要」(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/transaction/)および契約締結前交付書面・約款をご確認ください。この例は費用の読み方を示すものであり、他サービスとの優劣や特定EAの収益性を示すものではありません。

成績表を読むときの確認ポイント

ここまでの内容は、表示された損益にどの費用が含まれているかを確認すること、未反映の費用や受払いがあればその扱いを確かめること、そして比較する成績表の期間・取引回数・数量を揃えることに整理できます。

スプレッドフィルターなどによって取引対象そのものが変わる場合は、その違いも考慮する必要があります。

こうした確認は、あくまで費用を反映した損益の読み方を整理するものであり、それだけでEAの優劣を判断できるわけではありません。検証期間、損失の大きさ、最大ドローダウンなどを含む全体的な評価については、「EA評価の実践チェックリスト|検証条件から実運用まで5つの確認軸」(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/ea-knowledge/key-metrics-to-evaluate-ea/)をご覧ください。

まとめ

EAの成績を読むときは、取引コストの種類を知るだけでなく、表示された損益にどの費用がすでに含まれているかを確かめることが大切です。実際の約定価格に織り込まれた影響を二重に差し引かず、別途計上される費用がある場合に、その扱いを確認します。

また、スプレッドフィルターなどによって取引回数が変われば、平均損益の比較には別の注意が必要です。過去の費用反映後の平均損益も、将来の利益を保証するものではありません。

FEAT 3.0のサービス内容については、「FEAT 3.0サービス紹介ページ」(https://www.forex-exchange.co.jp/feat/)をご覧ください。

→ 関連用語をさらに詳しく知りたい方はこちら:用語集(https://www.forex-exchange.co.jp/support/vocabulary)
→ よくあるご質問はこちら:FAQ(https://www.forex-exchange.co.jp/support/faq/)

監修:株式会社トリロジー
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269

https://www.trgy.co.jp/

本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な技術解説を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAを利用したFX取引では、元本を割り込む損失が生じる場合があります。お取引にあたっては、契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。