EAポートフォリオによる資産運用|組み合わせ後の成績とリスク指標の見方
著者:FOREX EXCHANGE株式会社 監修:株式会社トリロジー

EAポートフォリオによる資産運用|組み合わせ後の成績とリスク指標の見方

EAを複数組み合わせて運用する場合、それぞれのEAの成績を個別に確認するだけでは、運用全体の特徴を把握できないことがあります。

あるEAが利益を上げている時期に別のEAが損失を出すこともあれば、複数のEAが同じ時期に損失を出すこともあります。そのため、組み合わせ後の成績を見る際は、個別の数値に加えて、ポートフォリオ全体の損益やリスクを確認する必要があります。

この記事では、EAポートフォリオの基本的な考え方と、組み合わせ後の成績を確認する際に使われるペイオフレシオ、プロフィットファクター、シャープレシオ、カルマーレシオについて解説します。

EAポートフォリオとは

EAポートフォリオとは、複数のEAを組み合わせ、その合計損益を一つの運用単位として捉える考え方です。

EAは、それぞれ異なる通貨ペア、売買ロジック、取引時間帯、保有期間などを持っています。こうした特性の異なるEAを同時に運用すると、個別EAの損益が合わさり、ポートフォリオ全体の損益が形成されます。

ただし、EAの数を増やしただけで、必ずしも損益の偏りが小さくなるとは限りません。

異なる通貨ペアを取引するEAであっても、同じ通貨や似た値動きの影響を受けている場合があります。また、名称や取引対象が異なっていても、実質的に同じ相場環境で利益や損失が生じるロジックであれば、成績が同じ方向に動くことがあります。

そのため、EAポートフォリオを考える際は、EAの数だけでなく、各EAの損益がどの程度連動しているかも確認します。

EAの組み合わせ方については、「EAは複数同時に使ってもいい?組み合わせ方の考え方」で詳しく解説しています。

個別EAの成績だけでは分からないこと

複数のEAを運用する場合、個別EAのバックテスト結果や実運用成績を並べるだけでは、同時運用した場合の損益の推移までは分かりません。

例えば、一方のEAが利益を上げている時期に、別のEAが損失を出している場合があります。この場合、ポートフォリオ全体では、それぞれの損益が合算された結果になります。

反対に、複数のEAが同じ時期に損失を出せば、ポートフォリオ全体の落ち込みが大きくなることがあります。

したがって、組み合わせ後の成績を確認する際は、個別EAの数値を足し合わせるだけでなく、同じ期間、資金、ロット、取引条件を前提として合成した損益の推移を確認します。

複数のEAが同時にポジションを保有した場合の必要証拠金、同じ通貨への偏り、ポジションの重なり、スプレッドや取引手数料なども、ポートフォリオ全体の成績に影響します。

損益の連動性も確認する

EA同士の損益がどの程度同じ方向に動いているかを見る際には、相関という考え方が使われます。

あるEAが利益を上げる時期に、別のEAも利益を上げる傾向が強ければ、両者の損益は同じ方向に動きやすいと考えられます。また、一方が利益を上げている時期に、もう一方が損失を出す傾向があれば、損益は異なる方向に動いていると考えられます。

損益の動きが異なるEAを組み合わせることで、あるEAの損失が別のEAの利益によって相殺される場合があります。ただし、過去に確認された相関関係が、将来も同じ状態で続くとは限りません。

相場環境や通貨間の関係が変化すると、それまで異なる動きをしていたEAが同じ方向に動くこともあります。相関は固定された性質ではなく、確認する期間によっても結果が変わります。

そのため、過去の相関だけを根拠として、将来の損失が抑えられると判断することはできません。

ポートフォリオ全体で確認したい4つの指標

EAポートフォリオの成績を確認する際には、利益額や勝率だけでなく、損益の特徴を異なる角度から見るための統計指標が使われます。

ここでは、ペイオフレシオ、プロフィットファクター、シャープレシオ、カルマーレシオの4つを取り上げます。

これらは、それぞれ確認する対象が異なります。一つの指標だけでEAやポートフォリオの優劣を判断するものではありません。

ペイオフレシオ

ペイオフレシオは、利益になった取引の平均額と、損失になった取引の平均額の関係を示す指標です。

計算式:ペイオフレシオ=平均利益÷平均損失の絶対値

例えば、利益になった取引の平均額が2万円、損失になった取引の平均額が1万円の場合、ペイオフレシオは2.0です。

この場合、平均的には一回の利益が一回の損失の2倍であったことを示します。ただし、ペイオフレシオが高ければ、必ず最終的な利益が大きくなるわけではありません。

利益となった取引の回数が少なければ、平均利益が平均損失を上回っていても、期間全体では損失になる場合があります。反対に、ペイオフレシオが低くても、勝率や取引回数によっては利益が残ることがあります。

そのため、ペイオフレシオは、勝率、取引回数、最大損失などと併せて確認します。

プロフィットファクター(PF)

プロフィットファクターは、一定期間の総利益と総損失の関係を示す指標です。一般的にPFと表記されます。

計算式:PF=総利益÷総損失の絶対値

例えば、一定期間の総利益が150万円、総損失が100万円の場合、PFは1.5です。

ペイオフレシオが一回あたりの平均利益と平均損失を比較するのに対し、PFは対象期間全体の総利益と総損失を比較します。

PFは対象期間や取引回数によって変わります。取引回数が少ない場合、一部の大きな利益や損失が数値に強く影響することがあります。

また、過去のデータに合わせて設定を細かく調整した結果、バックテスト上のPFが高くなっている場合もあります。過去データに適合しすぎた結果は、実際の運用で同じように再現されるとは限りません。

したがって、PFだけでなく、取引回数、対象期間、最大ドローダウン、実運用成績なども確認する必要があります。

PFについては、「プロフィットファクター(PF)とは?」で詳しく解説しています。

シャープレシオ

シャープレシオは、収益率と、その収益率のばらつきとの関係を見るために使われる指標です。

計算式:シャープレシオ=(運用収益率-無リスク資産の収益率)÷収益率の標準偏差

無リスク資産の収益率は比較の基準として用いられる収益率で、標準偏差は収益率のばらつきを示します。

同じ超過収益率で比較した場合、収益率のばらつきが小さい方が、シャープレシオは高くなります。ただし、シャープレシオが高いからといって、将来の利益や損失の範囲が保証されるわけではありません。

シャープレシオは、計算する期間、収益率の集計単位、無リスク資産の収益率の設定、年率換算の方法などによって値が変わります。

そのため、異なるEAやポートフォリオのシャープレシオを比較する場合は、同じ期間と計算条件で算出されているかを確認する必要があります。

カルマーレシオ

カルマーレシオは、年率収益率と最大ドローダウンの関係を見るために使われる指標です。

計算式:カルマーレシオ=年率収益率÷最大ドローダウンの絶対値

最大ドローダウンとは、対象期間において資産や損益が過去のピークからどの程度落ち込んだかを示す数値です。

同じ年率収益率で比較した場合、最大ドローダウンが小さい方がカルマーレシオは高くなります。

シャープレシオが収益率のばらつきを用いるのに対し、カルマーレシオは過去の最大の落ち込みを用いる点が異なります。

カルマーレシオは、一度の大きな損失や対象期間によって値が変化します。異なる期間で計算された数値を単純に比較することはできません。

また、過去の最大ドローダウンが小さかったとしても、将来の損失がその範囲内に収まることを示すものではありません。

最大ドローダウンについては、「最大ドローダウンとは?」で詳しく解説しています。

4つの指標は確認する対象が異なる

4つの指標は、それぞれ次のような関係を確認します。

指標 確認する関係
ペイオフレシオ 一回あたりの平均利益と平均損失
プロフィットファクター(PF) 一定期間における総利益と総損失
シャープレシオ 収益率と収益率のばらつき
カルマーレシオ 年率収益率と最大ドローダウン

これらの指標は、同じ成績を別の角度から見たものではありません。確認する対象や計算方法が異なるため、複数の指標を組み合わせてポートフォリオ全体の特徴を捉える必要があります。

ただし、指標を多く確認すれば、将来の成績を正確に予測できるわけではありません。いずれも過去の損益や収益率を基に計算された数値です。

同じ条件で合成損益を確認する

複数EAの成績を合成する場合は、各EAの計算条件をそろえる必要があります。

例えば、バックテストの対象期間が異なるEAをそのまま合算すると、相場環境の違いが結果に含まれます。また、初期資金やロットが異なる場合、損益額やドローダウンを同じ基準で比較できません。

ポートフォリオ全体の成績を確認する際は、次のような条件をそろえます。

  • バックテストの対象期間
  • 初期資金
  • ロット
  • 通貨ペア
  • スプレッド
  • 売買手数料
  • その他の取引条件

条件をそろえて合成した損益曲線を見ることで、複数EAを同時に運用した場合の利益、損失、停滞期間、最大ドローダウンなどを確認しやすくなります。

ただし、バックテスト上で成績を合成しても、実際の運用結果と完全に一致するわけではありません。

バックテストと実運用では条件が異なる

バックテストは、過去の相場データを使い、一定の条件でEAを動かした場合の結果を確認するものです。

一方、実運用では、スプレッド、スリッページ、約定環境、通信環境など、バックテストでは完全に再現しにくい条件が成績に影響します。

複数のEAを同時に運用すると、同じ時間帯に複数の注文が発生したり、同じ通貨へのポジションが重なったりする場合があります。こうした状況も、バックテストと実運用の差につながることがあります。

そのため、バックテストの合成結果だけでなく、公開されているフォワードテストや実運用成績がある場合は、それらも併せて確認します。

ただし、フォワードテストや実運用成績も過去の結果です。確認期間が短い場合や取引回数が少ない場合には、その時期の相場環境による偏りが含まれることがあります。

フォワードテストについては、「フォワードテストとは?EA選びで確認したい実運用データ」で詳しく解説しています。

バックテストと実運用の違いについては、「EAのバックテストとリアル成績が乖離する理由」もご覧ください。

統計指標を確認する際の注意点

統計指標は、EAやポートフォリオの過去の成績を整理し、その特徴を確認するための材料です。

しかし、統計指標は将来の成績を保証したり、損失を一定の範囲に制御したりするものではありません。

対象期間を変更すれば、PF、シャープレシオ、カルマーレシオなどの値も変化します。過去に良好な数値を示していたEAが、異なる相場環境でも同じ成績を示すとは限りません。

また、特定の数値だけを絶対的な基準として、EAの追加や除外、ロットの変更、稼働や停止などを判断することはできません。

複数EAを組み合わせても、個々のEAの設計、バックテスト期間、取引回数、最大ドローダウン、実運用成績などの確認は必要です。

ポートフォリオ全体の数字だけでなく、その数字がどのような期間と条件から算出されているかを併せて確認することが重要です。

まとめ

EAポートフォリオとは、複数のEAを組み合わせ、その合計損益を一つの運用単位として確認する考え方です。

EAの数を増やすだけでは、必ずしも損益の偏りが小さくなるとは限りません。組み合わせ後の成績を見る際は、個別EAの成績に加えて、合成損益、損益の連動性、必要証拠金、通貨の偏り、ポジションの重なりなどを確認します。

ペイオフレシオ、PF、シャープレシオ、カルマーレシオは、それぞれ異なる角度から損益の特徴を見るための指標です。一つの指標だけを絶対的な基準とせず、同じ期間と条件で計算された複数の情報を確認する必要があります。

また、バックテストや統計指標は過去の結果を基にしたものであり、将来の運用成果を保証するものではありません。どのEAを組み合わせるか、どのような条件で運用するかについては、利用者自身が複数の情報を比較したうえで判断する必要があります。

FEAT 3.0では、各EAについて、myfxbookによるリアル口座の運用実績を公開しています。どのEAを選ぶか、どのように運用するかの最終的な判断はお客様自身に委ねており、複数の情報を比較・検討していただける環境を整えています。

myfxbookについては、「myfxbookとは?EAのリアル口座成績を確認する方法」で解説しています。

詳しくは、FEAT 3.0サービス紹介ページをご覧ください。
→ 関連用語を確認したい方:用語集
→ よくあるご質問:FAQ

監修:株式会社トリロジー
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269

https://www.trgy.co.jp/

本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な技術解説を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAを利用したFX取引では、元本を割り込む損失が生じる場合があります。お取引にあたっては、契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。