EAは複数同時に使ってもいい?組み合わせ方の考え方
著者:FOREX EXCHANGE株式会社 監修:株式会社トリロジー

EAは複数同時に使ってもいい?組み合わせ方の考え方

EAを使い始めて少し慣れてくると、「1本のEAだけだと不調な時期が不安」「複数のEAを動かせばカバーできるのでは」と感じる方が少なくありません。複数のEAを同時に稼働させること自体は可能です。ただし、本数を増やせば増やすほど良いというものでもありません。この記事では、複数のEAを組み合わせる際の基本的な考え方と、よくある失敗のパターン、確認しておきたいポイントを整理します。

なぜ複数のEAを組み合わせるのか 

単体のEAには、得意な相場環境と不得意な相場環境があります。トレンドが続く相場に強いEAもあれば、一定の範囲で値動きが収まるレンジ相場に強いEAもあります。ひとつのEAだけを動かしていると、そのEAが苦手とする相場環境が続いた時期に、成績が落ち込みやすくなる傾向があります。

複数のEAを組み合わせる、いわゆるEAポートフォリオでは、こうした不調の時期を重ねにくくすることを目的にEAを組み合わせます。あるEAが苦戦している局面に別のEAが利益を出していれば、口座全体としての資産の落ち込みを緩やかに抑えられる、という発想です。

ただし、これは得意分野が異なるEAをうまく組み合わせた場合の話です。複数のEAを稼働させれば必ずリスクが下がるわけではありません。組み合わせ方を誤ると、期待した効果が得られないばかりか、管理の手間だけが増えてしまうこともあります。

よくある失敗のパターン 

「複数のEAを動かしているのに、なぜか全部が同じタイミングで苦しくなる」という経験をした方は少なくありません。その多くに共通しているのが、見た目上は複数動かしているつもりでも、実態としてはほぼ同じ相場の動きに反応している、という構造上の問題です。

よく見られる失敗の例を挙げます。

一つ目は、通貨ペアを分けただけで「分散できた」と考えるケースです。USDJPY・EURJPY・GBPJPYの3本を動かしていれば分散に見えますが、いずれも円が絡む通貨ペアです。大きな円安や円高が起きると、3本とも同じ方向に振れやすくなります。通貨ペアの数を増やすことと、値動きの相関を下げることは、別の問題です。

二つ目は、ロジックが似ているEAを複数本並べるケースです。順張り系のEAを5本動かしていると、トレンドが出ている相場では全部が利益を出し、逆に相場が荒れた局面では全部が同時に苦しくなりやすくなります。見た目の本数が多くても、得意な相場が同じであれば、分散の効果は限られます。

三つ目は、勝率の数字だけを見て選ぶケースです。勝率が高いこと自体は、そのEAの安全性を意味するものではありません。特に、小さな利益を積み重ねる一方で損切り幅を大きく設定しているEAや、ナンピン・マーチンゲールによって含み損を抱えながら勝率を維持するEAでは、高い勝率と大きな損失リスクが併存することがあります。

また、負けトレードがまれにしか発生しないEAでは、バックテスト期間中に深刻な損失局面が十分に含まれず、最大ドローダウンやリスクを過小評価してしまう可能性があります。複数のEAを組み合わせる際は、勝率だけでなく、平均利益と平均損失の比率、最大単発損失、最大連敗数、最大ドローダウン、含み損の大きさ、ナンピン・マーチンゲールの有無なども確認することが大切です。

分散の本質は「本数」ではなく「相関」 

ここで重要になるのが「相関」という考え方です。相関とは、複数のEAの値動きがどの程度似た動きをするかを表す考え方です。

片方のEAが利益を出しているときに、もう片方も同じように利益を出しやすい、あるいは同じように損失を出しやすい関係にあれば、この2本は「相関が高い」状態にあると考えられます。逆に、片方が苦戦しているときにもう片方が利益を出しやすい関係にあれば、「逆相関に近い」状態です。

分散として機能しやすいのは、相関が低い、あるいは逆相関に近いEA同士を組み合わせた場合です。たとえば、相場がトレンドを形成している局面に強いEAと、相場がある範囲で上下するレンジ局面に強いEAを組み合わせると、苦手な相場が重なりにくくなる可能性があります。同じ通貨ペア上で動かしていても、ロジックの方向性が逆であれば、逆相関に近くなることがあります。

一方で、通貨ペアやロジックが違っていても、実際の値動きが似たタイミングで動いているEAは少なくありません。「ロジックが違うから分散できているはず」という判断は、実際の値動きを確認するまでは確かめられません。

EAのロジックを分類して考える 

組み合わせを検討する際の参考として、EAのロジックはいくつかの種類に分けて考えることができます。

相場のトレンド(流れ)に乗って利益を狙うトレンドフォロー系、相場が一定の範囲で動くことを前提に利益を狙うレンジ系、価格が一定の水準を突破するタイミングを狙うブレイクアウト系(一定の価格帯を突破した動きを狙う)、一定の値幅ごとに注文を並べて繰り返し取引するグリッド系(一定の値幅ごとに注文を並べて繰り返し取引する)などがあります。これらはそれぞれ得意とする相場環境が異なるため、複数を組み合わせる際の参考になります。

ただし、ロジックの名称だけでは実際の値動きの相関を判断することはできません。同じ「トレンドフォロー系」でも、対象とする通貨ペアや時間軸によって動き方は異なります。あくまで組み合わせを考える際のひとつの出発点として活用してください。

時間帯も分散の軸になる 

ロジックや通貨ペアに加えて、EAが主に取引機会を持つ時間帯も組み合わせを考える際の参考になります。

FX市場では、時間帯によって値動きの特性が異なります。東京時間(アジア時間帯)は比較的値動きが落ち着いていることが多く、ロンドン・ニューヨーク時間は値動きが活発になりやすい傾向があります。特定の時間帯に偏ったEAを複数本並べていると、その時間帯の相場環境の変化が全体に影響しやすくなります。

取引機会が比較的多い時間帯が異なるEAを組み合わせることで、特定の時間帯の相場変化が口座全体へ与える影響を抑えやすくなる場合があります。

ロット配分も考えておきたい 

複数のEAを組み合わせる際、本数や種類と同様に大切なのが、それぞれのEAに割り当てるロット(取引量)の配分です。

同じ資金であっても、1本あたりのロットを大きくすれば、その分リスクも大きくなります。ドローダウン(資産の落ち込み幅)が大きいEAに同じロットを割り当てると、そのEAが不調の時期に口座全体への影響が大きくなります。

ドローダウンの大きさに応じてロットを調整する方法があります。値動きの振れ幅が大きいEAには小さめのロット、振れ幅が小さいEAには標準的なロットを割り当てることで、各EAが口座全体に与える影響の大きさを揃えやすくなります。また、獲得利益を最大ドローダウンで割った比率(リスク対リターンの効率)に応じて配分を決める考え方もあります。

ここで注意したいのが、ドローダウンをパーセンテージだけで判断するリスクです。たとえば初期資金100万円から運用が進み、資産が200万円に増えた後に50%のドローダウンが発生した場合、パーセンテージは50%でも実際の金額は100万円、つまり初期資金と同額が減ることになります。ロットを設定する際には、パーセンテージではなく実際の金額として最大いくら減る可能性があるかを確認しておくことが大切です。

本数を増やすこととロットを配分することは別の問題です。本数だけ整えても、ロット配分を考えていなければ、口座全体のリスク管理は不完全なままになります。

何本くらいが現実的か 

本数の目安は運用資金の規模や状況によっても変わりますが、個人投資家が管理しやすい範囲として、3〜6本程度を一つの目安に考えるケースがあります。

これは絶対的な基準ではありません。本数を増やせば増やすほど、相関の低い組み合わせを見つけることが難しくなり、管理の手間も増えていきます。どのEAがなぜ利益や損失を出しているのかを自分の頭で把握できているかどうかも、大切な判断基準のひとつです。

組み合わせた後も定期的に見直す 

複数のEAを組み合わせた後も、そのままにしておけばよいというわけではありません。相場環境は時間とともに変化するため、以前は相関が低かったEA同士でも、相場の構造が変わることで同じような値動きをするようになるケースがあります。

定期的に各EAの成績や口座全体の値動きを確認し、当初想定していた分散の効果が維持されているかどうかを見直すことも、運用を続ける上で参考になる視点です。

組み合わせる際に確認しておきたいポイント 

数のEAを組み合わせるときは、次のポイントを押さえておくと判断しやすくなります。

  • ロジックの方向性:すべてが同じ種類のロジックに偏っていないか。トレンド系だけ・レンジ系だけに偏っていると、苦手な相場で全部が同時に苦しくなりやすい。
  • 通貨ペアの相関:通貨ペアを分けていても、決済通貨(円やドルなど)が共通すると、値動きが連動しやすくなるケースがある。
  • 時間帯の分散:取引機会が集中している時間帯が同じEAを並べすぎると、その時間帯の相場変化が全体に影響しやすくなる。
  • ドローダウンの絶対額:パーセンテージだけでなく、実際の金額として最大いくら減る可能性があるかを確認する。
  • ロットの配分:本数を整えるだけでなく、それぞれにどの程度のロットを割り当てるかを合わせて考える。
  • 把握・管理のしやすさ:どのEAがどのような状況で動いているかを自分で把握できているか。 

まとめ 

複数EAの運用は、うまく設計できれば不調期を分散させる効果が期待できます。一方で、本数を増やすだけでは十分な効果は得られず、管理の手間だけが増えてしまうこともあります。

大切なのは、ロジックの方向性・通貨ペアの相関・時間帯・ドローダウンの絶対額・ロット配分という複数の軸を合わせて考えることです。そして、組み合わせた後も定期的に見直し、分散の効果が保たれているかを確認し続けることが、長く運用を続けるための基本的な姿勢になります。

何本のEAをどう組み合わせるかの最終的な判断は、ご自身の運用方針や資金状況に応じて行うことが大切です。

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監修:株式会社トリロジー 
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269

https://www.trgy.co.jp/

本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な技術解説を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAの利用には元本を割り込むリスクを含みます。FX取引にはリスクが伴います。お取引にあたっては契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。