EAは相場に応じて止めるべき?「フル稼働運用」という考え方
著者:FOREX EXCHANGE株式会社 監修:株式会社トリロジー

EAは相場に応じて止めるべき?「フル稼働運用」という考え方

EAの成績が落ち込んだとき、「いったん止めた方がよいのではないか」と考えることがあります。反対に、相場がEAに合っているように見えれば、再び稼働させたくなるかもしれません。

こうした判断は、一見すると損失を避けるための慎重な対応に見えます。しかし、停止と再稼働の条件があらかじめ決められていなければ、EAの取引に人の相場観を加えることになります。その結果、バックテストで確認した運用条件と、実際の運用条件が異なるものになる可能性があります。

そこで考えたいのが「フル稼働運用」です。本記事では、フル稼働を単に「何があっても止めないこと」と捉えるのではなく、EAの設計と検証条件を実運用でも維持するという観点から整理します。

「フル稼働運用」とは何か 

この記事でいうフル稼働運用とは、EAを常に売買させることではありません。あらかじめ設定された条件とルールに基づき、運用者の感覚で稼働と停止を繰り返さずに運用するという考え方です。

EAは、設定された売買条件を満たしたときに注文を出します。相場条件が整わず、取引を行わない時間があったとしても、それはEAのルールに基づく動作です。一方、「最近負けているから」「相場が難しそうだから」と運用者がEAそのものを停止する行為は、EAが判断した結果ではありません。

この違いを整理すると、フル稼働運用の中心にあるのは稼働時間の長さではなく、「誰が、どのルールで取引の実行を決めるのか」という点です。EAに組み込まれた条件に従うのか、その時々の相場観で運用者が判断を加えるのかによって、運用の性質は変わります。

場当たり的な停止がバックテストとの比較を難しくする 

バックテストとは、過去の相場データにEAを適用し、同じ条件で使い続けた場合の損益や取引傾向を確認するものです。その結果には、利益が続く期間だけでなく、連続損失や停滞期、ドローダウンも含まれています。

ドローダウンとは、運用資産が過去のピークからどの程度落ち込んだかを示すものです。バックテストで確認した最大ドローダウンは、検証期間において発生した最も大きな落ち込みであり、将来の損失の上限を保証するものではありません。それでも、EAがどのような不調期を経験してきたかを把握するための材料になります。

ところが、実運用で不調に見える期間だけEAを止めると、バックテストに含まれていた取引の一部を人の判断で除外することになります。再稼働の時期も運用者が決めるのであれば、実運用は当初検証したルールとは異なる条件で進みます。

この場合、バックテストで得られた勝率、PF、平均利益・平均損失、ドローダウンなどを、実運用の結果とそのまま比較することが難しくなります。停止によって損失を避けられることもあれば、その後の取引機会を逃すこともありますが、どちらになるかを事前に判断できるとは限りません。

停止・再稼働を運用者が判断すると何が変わるか 

相場を見てEAを止める場合、停止だけでなく、再稼働の判断も必要になります。「相場が落ち着いたら」「成績が戻りそうになったら」といった基準では、同じ状況でも人によって判断が変わり、後から同じ運用を再現することが難しくなります。

一方、EAにあらかじめ組み込まれた稼働条件に従って売買の有無が決まることは、運用開始後に人が相場を見てEAを停止・再稼働させることとは性質が異なります。重要なのは、相場が動いてから運用者が都度判断を加えるのではなく、EAの設計・検証上の前提と実運用の条件をそろえることです。

したがって、「EAは止めるべきか、止めないべきか」という二者択一だけで考えるのは適切ではありません。確認すべきなのは、そのEAがどのような稼働条件を前提として設計・検証されているか、そして実際の運用がその条件に沿っているかという点です。

直近の成績だけで「好調・不調」を決めにくい理由 

EAを停止したくなるきっかけとして多いのが、直近の連続損失や資産曲線の停滞です。ただし、短い期間の結果だけで、それが一時的な損益のばらつきなのか、EAの特徴が相場に合わなくなった状態なのかを判断することは容易ではありません。

勝率やPFも、取引回数が少ない段階では大きく変動します。好成績が続いているときだけ稼働し、損失が続いたところで止める運用では、すでに発生した結果を見て次の取引の有無を決めることになります。しかし、直近の成績が今後もそのまま続くことを保証するものではありません。

また、停止後に相場が変化したように見えても、再稼働の条件が明確でなければ、「もう大丈夫そうだ」という感覚に頼ることになります。停止と再稼働のたびに判断基準が変われば、どの運用方法によって結果が生じたのかを検証しにくくなります。

直近の損益だけを見るのではなく、バックテストで確認した連続損失、ドローダウン、取引回数、損益のばらつきと、実運用の状況を比較することが参考になります。ただし、過去の範囲内であることは、その後の回復や将来の成果を保証するものではありません。

フル稼働は「リスクを考えずに使い続けること」ではない 

フル稼働を前提とする場合でも、EAのリスクを確認せずに運用を続けてよいという意味ではありません。継続運用の前提となるのは、利益だけでなく、損失の発生方法や資金の落ち込みまで含めて検証されていることです。

たとえば、損切りがどのような条件で行われるか、過去にどの程度のドローダウンが発生したか、連続損失がどれくらい続いたかを確認する必要があります。平均損失が同じEAであっても、損失が一定の範囲に集まっているものと、まれに大きな損失が発生するものとでは、運用時のリスクの現れ方が異なります。

PFや勝率だけでは分からないこと 

PF(プロフィットファクター)は、総利益を総損失で割った指標です。ただし、PFが高いことだけで、EAの運用リスクを判断することはできません。検証期間、取引回数、最大ドローダウン、平均利益・平均損失、損益のばらつきなども併せて確認することが、EAの特徴を把握する際の参考になります。

たとえば、小さな利益を積み重ねる一方で、損失の確定を先送りするような取引構造では、確定損失が少ない期間のPFや勝率が高く見えることがあります。しかし、評価損が拡大した場合や大きな損失が一度に確定した場合には、それまでの利益が失われる可能性があります。表面上の成績だけでなく、損失がどのような条件で確定するのかにも目を向ける必要があります。

損切りの仕組みを確認する 

損切りの設定についても、数値が小さければ安全、大きければ危険と一律に判断できるものではありません。相場の値動きやEAの売買ロジックによって、損切りが機能する場面は異なります。確認したいのは、損切りの仕組みが過去の特定期間だけに合わせられたものではないか、相場の変化を含む検証の中でどのような損失が発生しているかという点です。

フル稼働を前提にするほど、こうした損失構造の確認は欠かせません。継続すること自体がリスクを抑えるのではなく、継続した場合に生じ得る損失をあらかじめ把握し、その変動に耐えられる運用条件を整えることが前提になります。

つまり、フル稼働運用は「バックテストの数字を信じて放置すること」ではありません。想定される不調期や損失構造を理解し、資金管理を含めて継続できる条件を事前に検討したうえで、設計されたルールを運用者の感覚で変えないという考え方です。

単一のEAだけで考えないという視点 

EAには、得意とする相場環境と、成績が伸びにくい相場環境が生じることがあります。トレンドが続く局面と値動きが一定の範囲に収まりやすい局面では、同じ売買ロジックでも結果が異なる可能性があります。

一つのEAがすべての相場局面に同じように対応することを前提にすると、不調期が続いたときの心理的な負担が大きくなり、場当たり的な停止につながることがあります。そこで参考になるのが、値動きの特徴や売買ロジックが異なる複数のEAを組み合わせるポートフォリオという考え方です。

複数のEAを組み合わせる目的は、損失をなくすことではありません。それぞれの成績が異なる時期に動くことで、一つのEAの不調が運用全体に与える影響を抑えられる可能性があります。ただし、複数のEAを使えば必ずリスクが下がるわけではなく、組み合わせた後の損益やドローダウンを全体として確認する必要があります。

ポートフォリオ運用においても、特定のEAだけを直近の成績によって止めたり再開したりすれば、当初想定した運用構造が変わります。各EAをどのような役割で組み合わせ、どの条件で継続するのかを事前に整理することが、運用結果を検証するうえでの前提になります。

フル稼働を考える前に確認したいこと 

EAをフル稼働させるかどうかを考える際は、少なくとも次の点を確認しておくことが参考になります。

一つ目は、EAの設計上の稼働条件です。継続稼働を前提としているのか、特定の条件で取引を控える仕組みが組み込まれているのかを確認します。

二つ目は、バックテストの条件です。どの程度の期間と取引回数で検証されているか、異なる相場環境が含まれているかを確認します。短期間の好成績だけでは、不調期を含む損益の傾向を把握しにくい場合があります。

三つ目は、損失の構造です。最大ドローダウンだけでなく、平均損失、連続損失、損益のばらつき、損切りの仕組みなどを確認します。特定の数値だけを絶対的な基準とせず、複数の指標を組み合わせて見ることが大切です。

四つ目は、実運用における損益の推移です。公開されている運用実績がある場合は、取引回数、平均利益・平均損失、ドローダウン、損益のばらつきなどを確認します。短期間の好不調だけでなく、どのような損失を経てきたかに目を向けると、EAの特徴を把握しやすくなります。

五つ目は、複数のEAを組み合わせる場合の運用全体の損益です。個々のEAの成績だけでなく、組み合わせた後の損益の推移やドローダウンも確認します。一つのEAの不調がほかのEAによってどの程度補われているかを含め、運用全体の構造として見ることが参考になります。

まとめ 

EAの「フル稼働運用」とは、相場状況にかかわらず無条件に使い続けることではありません。EAの設計と検証で定められた条件を、実運用でもできる限り一貫させるという考え方です。

直近の成績や相場の印象だけを理由に停止と再稼働を繰り返すと、バックテストと実運用の条件が異なり、EA本来の成績やリスクを検証しにくくなります。一方で、継続運用を考えるには、バックテストの結果だけでなく、損切り構造、最大ドローダウン、取引回数、損益のばらつき、リアル口座のフォワード成績などを総合的に確認することが必要です。

EAごとに設計上の前提は異なります。すべてのEAについて一律にフル稼働が適切だと判断するのではなく、そのEAがどのような条件で検証され、どのようなリスクを想定しているのかを確認することが、運用方法を考える際の材料になります。

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監修:株式会社トリロジー
金融商品取引業 近畿財務局長(金商)第372号
一般社団法人 資産運用業協会 022-00269

https://www.trgy.co.jp/

本記事は、株式会社トリロジーの監修を受け、FOREX EXCHANGEが表示するものです。なお、監修会社である株式会社トリロジーは、EAナレッジ全体の監修を行っております。本記事は一般的な技術解説を目的としており、個別のEAの推奨や投資助言を行うものではありません。本記事で示す内容は過去のデータおよび一般的傾向に基づく参考情報であり、個別のEAの優劣や将来の運用成果を保証するものではありません。EAを利用したFX取引では、元本を割り込む損失が生じる場合があります。お取引にあたっては、契約締結前交付書面および約款を十分にご確認ください。